ヒルドゥール・グドナドッティル
チェロ、ヴォーカル、作曲
従来のジャンル区分にとらわれず、枠組みを超えた挑戦を続けるアイスランドのチェリスト、歌手、作曲家であるヒドゥル・グドナドッティルは、その名人芸、多才さ、独創性で、現代音楽シーンにおける独自の地位を確立している。
1982年にレイキャヴィークの音楽一家に生まれたグドナドッティルは5歳でチェロを始めた。レイキャビク音楽アカデミーで学んだ後、アイスランド芸術アカデミーとベルリン芸術大学で作曲とニューメディアを学んだ。現在ベルリン拠点とする彼女は、映画、テレビ作品において、同じシーズンにアカデミー賞、ゴールデングローブ賞、BAFTA賞を受賞した史上初の女性作曲家として、前例のない国際的評価を得ている。また、女性作曲家による1シーズンでの受賞数でも新記録を樹立した。HBOドラマシリーズ『チェルノブイリ』の画期的な楽曲は昨年9月にエミー賞を受賞。これにより10月には2019年ワールド・サウンドトラック・アワードでの最優秀テレビ音楽作曲家に選ばれ、さらにグラミー賞の最優秀映像メディア・サウンドトラック賞を受賞した。この部門で女性として単独受賞を果たしたのは、グドナドッティルが史上初である。
また、トッド・フィリップス監督のダークサイコスリラー映画『ジョーカー』の哀切なサウンドトラックで、1947年のゴールデングローブ賞オリジナル作曲賞(映画部門)導入以来初の女性単独受賞を果たし、歴史に名を残すこととなった。さらに、批評家賞、ハリウッド批評家協会賞、BAFTA最優秀作曲賞、初のアカデミー賞最優秀作曲賞も獲得した。
ドイツ・グラモフォンの専属アーティストであるグドナドッティルは、過去にイエロー・レーベルで、故ヨハン・ヨハンソンとの録音や、ピアニスト、ヴィキングル・オラフソンのアルバム『バッハ・リワークス』の収録曲1曲の作曲、録音を行っている。また、アイスランド交響楽団、アイスランド国立劇場、テート・モダン、英国映画協会、スウェーデン王立歌劇場、ヨーテボリ国立劇場向けの作曲を手掛けている。ヴォーカリスト、チェリストとして、あるいは彼女が独自に開発したハルドロフォン(フィードバック楽器)、オマル(6弦の電気音響チェロ/ヴィオラ・ダ・ガンバ)など、伝統楽器ではない楽器を演奏し、ハウシュカ、ニコ・マーリー、坂本龍一、ヴァルゲイル・シグルズソン、スクーリー・スヴェリッソン、デヴィッド・シルヴィアンなどのアーティストと共演や録音を行っている。
グドナドッティルは北欧理事会音楽賞の年間最優秀作曲家賞とWSAの年間最優秀発見賞へのノミネート歴を持つほか、《マグダラのマリア》ではヨハンソンと共にアジア太平洋映画賞の最優秀作曲賞を受賞している。また『ジャーニーズ・エンド』では北京国際映画祭の最優秀作曲賞を受賞した。映画芸術科学アカデミーの会員でもある。