ピーター・ピアーズ
テノール、著者、翻訳、編作
1910 — 1986
ピーター・ピアーズは、1910年に英国のサリーで7人兄弟の末っ子として生まれた。オックスフォード大学で奨学生としてオルガンを学び、王立音楽院ではオペラの奨学金を得て声楽 (テノール) を専攻。後にメゾソプラノ歌手エレナ・ゲルハルトに師事した。1934年にBBCシンガーズに加わり、彼らとアメリカをツアーした。1938年、グラインドボーン合唱団に加入。1939年にアメリカへ移り、生涯のパートナーであったベンジャミン・ブリテンとともにリサイタルを行った。1943年に英国に戻ってからサドラーズ・ウェルズの歌劇場に加わり、1945年に同劇場でブリテン作曲《ピーター・グライムズ》のタイトル・ロールを初演した。ブリテンとともに1948年にオールドバラ音楽祭を創設・開催し、高度な音楽教育を提供するブリテン=ピアーズ・スクールも設立した。またピアーズとブリテンは、ソプラノ歌手ジョーン・クロスとともに、主にイギリスの作曲家のオペラ作品を上演する「イングリッシュ・オペラ・グループ」も立ち上げた。
ピアーズは、ドイツ・リート歌手およびオラトリオのソリストとしても大きな成功を収め、特にバッハの受難曲の福音史家として高い評価を得た。 ロンドンのコヴェント・ガーデン・ロイヤル・オペラで定期的に歌った他、ミラノ・スカラ座、ウィーン、チューリヒ、ミュンヘン、ローマ、さらにアメリカで客演。1974年に《ヴェニスに死す》のアッシェンバッハ役でニューヨークのメトロポリタン歌劇場にデビューした。1978年には英国からナイト爵位を授与されている。ピアーズは、《ルクレティアの凌辱》、《アルバート・ヘリング》、《ビリー・バッド》、《グロリアーナ》、《ねじの回転》、《真夏の夜の夢》(ブリテンと台本を共同作成) 、教会上演用寓話《カーリュー・リヴァー》、《オーウェン・ウィングレイヴ》、《ヴェニスに死す》など、ブリテンのほぼ全てのオペラ作品で主要なテノール役を務めた。また、ギター奏者ジュリアン・ブリームとのデュオによるエリザベス朝のリュート歌曲の演奏でも名声を博した。1986年春、オールドバラで逝去。