カミーユ・トマ

楽観性、活気、底抜けの明るさが、チェロ奏者カミーユ・トマの魅力的な人柄を豊かに彩っている。彼女のカリスマ性あふれる演奏は、生きることへの情熱と、聴衆の心を開きクラシック音楽の素晴らしさと感動を伝えたいという思いに突き動かされている。1988年にパリで生まれ、4歳でチェロを始めたトマは、たちまち才能を発揮し、名教師マルセル・バルドンの指導を受けるようになった。2006年にベルリンに移り、ハンス・アイスラー音楽大学でシュテファン・フォルクとフランス・ヘルメルソンに師事した。その後にワイマールのフランツ・リスト音楽大学に進んでヴォルフガング・エマヌエル・シュミットに師事し、さらなる研鑽を積んだ。 音楽大学在学中に、トマは早くもパリのサル・ガヴォーやシャンゼリゼ劇場、ジュネーヴのヴィクトリア・ホール、イェルサレム音楽センターなどの一流ホールにデビューし、すぐさま次回の出演依頼を受けた。その成熟した芸術性により各地のコンクールで数々の賞に輝いたトマは、2014年2月に「フランス版グラミー賞」とも言える第21回ヴィクトワール・ド・ラ・ミュジーク・クラシックで新人賞にノミネートされ、国際的な活動への突破口を開いた。欧州放送連合が主催する2014年の新人賞にもノミネートされ、2016年には『パリ・マッチ』誌との提携によるRTBF（ラジオ・テレビ／ベルギー・フランス語放送）主催の「セ・デュ・ベルジュ」賞で、若手ソリスト部門の優勝者に選ばれた。2018年1月には、『フォーブス』誌の栄誉ある「世界を変える30歳未満の30人」に選出された。 トマの自然体な魅力はテレビ視聴者たちの心もとらえており、これまでフランスTF1の「20時のニュース」、ドイツのドイチェ・ヴェレ、ローランド・ビリャソンが司会を務めるARTEの「明日のスターたち」などに出演。また、インターネット配信されたランスのフラヌリー・ミュジカル音楽祭でのデビュー・コンサートは、オンラインの聴衆を魅了した。トマはソリストとしての活動に加え、室内楽の演奏にも力を注いでいる。2016年にベルギー人ピアノ奏者ジュリアン・リベールとの共演でリリースしたセカンド･アルバム『追憶 Reminiscences』は、2017年にエコー･クラシック賞（19世紀の室内楽作品部門）を授与された。 若きフランス・ベルギー人チェロ奏者トマは、2017年にドイツ・グラモフォンと専属録音契約を結んだ。人びとの心をつなぎ、多様な文化、国籍、背景の人びとを結ぶ芸術の力を信じるトマのDG第2弾アルバム『ヴォイス・オブ・ホープ』は、UNICEFの協力でレコーディングされた初のクラシック・アルバムであり、音楽を通して他者の力になりたいというトマの願いを反映している。収録曲の中心をなすファジル・サイのチェロ協奏曲《ネヴァーギブアップ》（世界初録音）は、パリとイスタンブールへのテロ攻撃に対して書かれた新作で、トマのために作曲され、2018年にトマにより世界初演された。 2019-2020年シーズンに、トマは日本音楽財団からストラディヴァリウス「フォイアマン Feuermann」を一年間貸与された。同シーズン中、エルプフィルハーモニー・ハンブルクにデビュー。2019年のライデール音楽祭ではレジデント・アーティストを務め、この間にイギリスでの協奏曲デビュー（エルガーの協奏曲、共演はスカボローのオペラ・ノース管弦楽団）を飾った。最近では中東を訪れ、ドバイ歌劇場でバッハのチェロ組曲を演奏した。