アルフレッド・ブレンデル
ピアノ
アルフレッド・ブレンデルは、20世紀および21世紀の最も偉大な音楽家たちの中で、揺るぎない地位を占めている。ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、シューマン、リストの作品の卓越した演奏解釈で定評のある彼は、今日の音楽界の紛れもない権威の一人である。1960年代、ベートーヴェンの全ピアノ作品を録音(ヴォックス・レーベル)した初のピアニストとなった。1969年にフィリップス・レーベルの専属録音アーティストとなったブレンデルは、後に再びベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲を録音している。他のいかなるピアニストよりも膨大な数を誇る彼のディスコグラフィには、バッハからシェーンベルクまで、中央ヨーロッパの伝統を汲む大作曲家たちの独奏曲、室内楽曲、オーケストラ作品の録音が幅広く含まれている。
ブレンデルは、時に同一の賞に複数回輝くなど、おびただしい数の賞を受賞しており、その好例として、リスト協会のグラン・プリ、グラモフォン賞、フランス・ディスク大賞、日本レコード・アカデミー賞、ドイツ・レコード批評家賞、フランス・ディスク・アカデミーのグラン・プリ、エディソン賞、英国音楽商協会賞が挙げられる。 さらに、レオニー・ソニング音楽賞、エルンスト・フォン・ジーメンス音楽賞、ヴェネツィア賞、高松宮殿下記念世界文化賞 (2009年) を授与されている。1989年、英国における音楽への傑出した尽力を称えられ、名誉大英帝国勲章 (KBE) を受勲。2004年にフランスのレジオン・ドヌール勲章を、2007年にドイツ連邦共和国功労勲章の最高位を受章し、 オックスフォード大学、エール大学、エクセター大学、ダブリン大学から名誉学位を贈呈されている。
またブレンデルは、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団からハンス・フォン・ビューロー・メダルを授与された。1998年にはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の名誉会員に選出されているが、1842年の同団設立以来、ブレンデル以前にこの栄誉に浴したピアニストはエミール・フォン・ザウアーとヴィルヘルム・バックハウスの二人だけである。ブレンデルは世界中の音楽機関や大学で、演奏をめぐる自身の尽きぬ探求の中心を成してきた音楽的な事柄や問題について、実例を交えながら講義を行っている。彼が2008年12月18日にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との共演で開いた引退公演は、『デイリー・テレグラフ』紙上で、「ここ10年間の最も重要な文化的瞬間百選」の一つに選ばれた。