ベルナルド・ハイティンク
指揮
1929 — 2021
アムステルダム出身のベルナルト・ハイティンクは、生地で音楽教育を受け、ヴァイオリン奏者としてオランダ放送フィルハーモニー管弦楽団に入団した。指揮者としてのキャリアは1954年に始まる。この時彼は、オランダ放送の指揮講座でフェルディナント・ライトナーに師事し、1957年にオランダ放送フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者に就任した。その後、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団で27年間、首席指揮者を務めた。オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団からパトロンの称号を、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団から名誉指揮者の称号を贈られた。
この他、グラインドボーン音楽祭とコヴェント・ガーデン・ロイヤル・オペラの音楽監督、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、ドレスデン・シュターツカペレ、シカゴ交響楽団の首席指揮者を歴任。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ヨーロッパ室内管弦楽団の名誉会員に選出され、2019年にはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団からも名誉会員の称号を贈呈された。
グスタフ・マーラー、アントン・ブルックナー、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン、フランツ・リストの演奏解釈でとりわけ定評のあるハイティンクの指揮は、ウィレム・メンゲルベルクの伝統を受け継ぐもので、楽曲の細部への入念な配慮を特徴とする。比類のない強い個性と信念を兼ね備えたハイティンクは、コンセルトヘボウ管弦楽団を率いてマーラー、ブルックナー、ブラームス、シューマンの交響曲全集を録音し、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ボストン交響楽団とも幅広いレパートリーを録音した。 さらにハイティンクのディスコグラフィには、バイエルン放送交響楽団やドレスデン・シュターツカペレとの共演や、グラインドボーン音楽祭、コヴェント・ガーデン・ロイヤル・オペラなどでの多数のオペラの録音も含まれる。ロイヤル・オペラとのヤナーチェク《イェヌーファ》の録音はグラミー賞に輝いた。
ハイティンクは、同世代中最も優れた指揮者の一人として、『ミュージカル・アメリカ』誌の「ミュージシャン・オブ・ザ・イヤー」に選出され、グラミー賞生涯功労賞を授与されるなど、音楽への貢献を幾度も称えられてきた。オランダから獅子勲章コマンダーを、英国からコンパニオン・オブ・オナー勲章を受勲。オックスフォード大学と王立音楽院から名誉博士号を贈呈されている。指揮者として65年のキャリアを築いた彼は、2021年に92歳で逝去した。ハイティンクは、交響曲やオペラの傑作の比類なき名演をレガシーとして残し、450を超える膨大な数の録音を残した伝説的音楽家として、また教育とマスタークラスに多くの時間を割いて次世代の指揮者たちを導いた情熱的なメンターとして、人びとの記憶に残ることだろう。