ルネ・フレミング
ソプラノ
今日、最も高い人気と知名度を誇る“音楽大使”の一人であるソプラノ歌手、ルネ・フレミングは、その壮麗な声、この上ない芸術性、舞台上での圧倒的な存在感で聴衆を魅了してきた。世界屈指のオペラ・ハウスやコンサート・ホールで光彩を放ち続ける彼女の魅力は、今や他の音楽ジャンルやメディアにまで達している。 フレミングは、ヨーロッパと北米の全メジャー・オーケストラから招かれ、ダニエル・バレンボイム、クリストフ・エッシェンバッハ、ワレリー・ゲルギエフ、ベルナルト・ハイティンク、ジェイムズ・レヴァイン、サー・チャールズ・マッケラス、ズービン・メータ、小澤征爾、サー・アントニオ・パッパーノ、アンドレ・プレヴィン、クリスティアン・ティーレマン、マイケル・ティルソン・トーマス、ゲオルク・ショルティら、著名な指揮者たちと共演している。
フレミングは、ともに声楽教師である両親の下にペンシルヴェニア州で生まれ、ニューヨーク州ロチェスターで育った。ニューヨーク州立大学ポツダムとイーストマン音楽学校で学位を取得した後、フルブライト奨学生としてドイツに留学し、ジュリアード音楽院でも学んだ。活動初期には、メトロポリタン歌劇場のナショナル・カウンシル・オーディション(1988年)に合格し、リチャード・タッカー賞、ジョージ・ロンドン賞も受賞している。1988年にモーツァルトの《フィガロの結婚》の伯爵夫人役でデビューし、大きな注目を集めた。その他の代表的な当たり役として、ヴェルディ《オテロ》のデスデモーナ、《椿姫》のヴィオレッタ、ドヴォルザーク《ルサルカ》、マスネ《マノン》・《タイス》、リヒャルト・シュトラウス《アラベラ》の題名役、同《カプリッチョ》の伯爵令嬢マドレーヌ、《ばらの騎士》の元帥夫人などが挙げられる。
現代音楽の擁護者でもあるフレミングは、メトロポリタン歌劇場でジョン・コリリアーノの《ヴェルサイユの幽霊》の世界初演に出演し、同歌劇場およびシカゴ・リリック・オペラでカール・フロイドの《スザンナ》の初演にも出演した。またサンフランシスコ歌劇場で、プレヴィンの《欲望という名の電車》のブランチ役を世界初演。2007年にはサイトウ・キネン・フェスティバル松本で、アンリ・デュティユーが彼女のために書いた連作歌曲《時の大時計》を、小澤征爾の指揮で世界初演した。2009年、フレミングはニューヨーク・フィルハーモニックのオープニング ・ナイト・ ガラ公演で、新音楽監督アラン・ギルバートの指揮の下、メシアンの《ミのための詩》を歌った。 2010年の大晦日には、クリスティアン・ティーレマン指揮ドレスデン・シュターツカペレとの共演で、ゼンパーオーパーにてハンナ・グラヴァリ(《メリー・ウィドウ》)を歌った。その他、フレミングの活動のハイライトとして、ティーレマン指揮ドレスデン・シュターツカペレとの共演でバーデン・バーデン音楽祭にて初挑戦したアリアドネ役(シュトラウス《ナクソス島のアリアドネ》)、ウィーン、コヴェント・ガーデン、カーネギー・ホールでの演奏、サンフランシスコ交響楽団とニューヨーク・フィルハーモニックとの共演、スーザン・グラハムとの米国リサイタル・ツアー、中国と台湾でのソロ・リサイタル・ツアーが挙げられる。
1995年からデッカ・レコードの専属レコーディング・アーティストであるフレミングの録音は、数々の賞に輝いている。これまでに、グラミー賞の最優秀クラシック声楽部門を4回、グラモフォン賞を3回、リリック・レコード・アカデミーの賞を受賞。また、クラシック・ブリット・アワードの最優秀女性アーティスト賞および音楽への傑出した貢献を称える特別賞を授与された。同様に音楽への傑出した貢献を称えられ、ジュリアード音楽院、イーストマン音楽学校、カーネギー・メロン大学から名誉博士号を贈呈されたフレミングは、王立音楽院から名誉会員の称号を、フランス政府からレジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを与えられ、スウェーデンのポーラー賞を受賞した。2012年には、ドイツのエコー賞で「シンガー・オブ・ザ・イヤー」に選出されている。「万人のディーヴァ」として知られるフレミングは、ノーベル平和賞授賞式、オリンピックなど、数多くの名誉ある国際舞台で歌唱を披露しており、メトロポリタン歌劇場の125年の歴史上、オープニング・ナイト・ガラに主役で登場した初の女性歌手ともなった。フレミングは、リンカーン記念堂で開かれテレビ放送された「ウィ・アー・ワン:オバマ大統領就任記念コンサート」、米国最高裁判所、バッキンガム宮殿 (チャールズ皇太子) 、プラハのビロード革命20周年記念行事(ヴァーツラフ・ハヴェル元チェコ大統領からの招待)で歌い、バッキンガム宮殿で行われたエリザベス2世女王陛下のダイヤモンド・ジュビリー・コンサートにも出演した。シカゴ・リリック・オペラ初のクリエイティヴ・コンサルタントを務め、現在はカーネギー・ホール・コーポレーションとシング・フォー・ホープの理事会メンバー、ホワイト・ナイツ・ファウンデーション・オブ・アメリカの顧問委員会メンバーの任にある。自身のキャリアと創作プロセスについて詳細に綴った『The Inner Voice (魂の声 プリマドンナができるまで) 』を出版。