中世音楽
中世は900年にわたる広大な時代であり、現在の歴史的証拠に基づけば、クラシック音楽の歴史の始まりである。単旋律のグレゴリオ聖歌から複声音楽、そして最終的には多声音楽へと発展し、今日の音楽の礎を築いた。この時代には、楽譜が開発され、リズム、対位法、器楽の分野で大きな理論的進歩が見られた。
当時の音楽は、無伴奏かつ単旋律で、リズムが自由に変化し、モーディに基づいたモノフォニックなものが主流であった。13世紀末から14世紀初頭にかけて、対位法が登場する。最初のポリフォニーでは、オルガヌムと呼ばれる第2声部を一定の間隔で歌ったり、平行移動や逆行移動、あるいは固定した伴奏の上でメリスマを歌うなど、多声部のテクスチャーの実験的な試みが行われた。ポリフォニーで最も洗練され、人気を博したのはモテットで、当時は教会が重要な役割を担っていたが、歌詞は典礼文・聖典から世俗的な題材へと拡大しはじめた。この時代の世俗音楽は、リュート、ダルシマー、フルート、ヴィール、プサルター、ハーディ・ガーディなどの弦楽器を使ったもので、トルバドゥールやトルヴェールと呼ばれる旅音楽家たちが、自分たちの歌声に合わせて演奏したものが代表的である。一方器楽は、舞台上演や宮廷での奏楽から発展したものである。
アルス・ノヴァ(新芸術)運動が始まると、リズムの多様性や各パートの独立性が向上し、近代的記譜の基礎が作られた。作曲家、詩人、司教であったフィリップ・ド・ヴィトリの作品は、後の作曲家たちに大きな影響を与え、新しい記譜法を採用し、やがてヨーロッパ中に広まっていった。15世紀初頭、中世はルネサンスに取って代わられた。