クリスティアン・ティーレマン
指揮
1959年にベルリンで生まれたクリスティアン・ティーレマンは、若い頃に多くの小さな歌劇場でコレペティトールとして経験を積んだ――これはカラヤンが、クラシック音楽の指揮者にとって「ハードだが不可欠な苦行」だと述べた仕事である。ベルリン・ドイツ・オペラでワーグナーの《ローエングリン》を振り大成功を収めたティーレマンは、1990–1991年シーズンにサンフランシスコでリヒャルト・シュトラウス作曲《エレクトラ》の新演出を指揮して米国にデビューした。 その後、メトロポリタン歌劇場でシュトラウスの《ばらの騎士》や《アラベラ》(共演はキリ・テ・カナワ)などを指揮した。
20年にわたりイタリアの全ての主要な歌劇場でオペラ指揮の経験を重ねたティーレマンは、1993年にボローニャ市立劇場の首席客演指揮者に就任。その後は共演オーケストラを絞り、ロンドンのコヴェント・ガーデン・ロイヤル・オペラ、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場、ウィーン国立歌劇場など、歌劇場を厳選して指揮をするようになった。1997年、ベルリン・ドイツ・オペラの音楽総監督として故郷ベルリンに戻った。ティーレマンのバイロイト音楽祭デビューは2000年で、以来、毎年同音楽祭に登場し、ワーグナー演奏の指標を示す名演で観客を熱狂させている。2003年にドイツ連邦共和国功労勲章を受章し、翌年にミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の音楽総監督に就任。2013年からザルツブルク復活祭音楽祭の芸術監督、そしてドレスデン・シュターツカペレ(ドレスデン国立管弦楽団)の首席指揮者を務めている。2015年にバイロイトの音楽監督に就任し、同年、ライプツィヒのリヒャルト・ワーグナー協会からワーグナー賞を授与された。2016年には、ゼンパーオーパー・トラスト賞を贈られている。
多才なコンサート指揮者としても引く手あまたのティーレマンは、これまでアムステルダム、ロンドン、ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィアの世界屈指のオーケストラと共演し、イスラエル、日本、中国でも演奏を行っている。彼は、ドレスデン・シュターツカペレを率いてゼンパーオーパーやツアー先で数多くの演奏会を行い、ワーグナーとシュトラウスの生誕記念イヤーを充実させた。 ティーレマンのプログラミングは、バッハからヘンツェ、リーム、グバイドゥーリナに至るまで、幅広い音楽を取り上げることで知られる。新制作にも積極的に関わり、ドレスデンで《マノン・レスコー》、《シモン・ボッカネグラ》、《エレクトラ》、《魔弾の射手》、ザルツブルクで《パルジファル》、《アラベラ》、《カヴァレリア・ルスティカーナ》/《道化師》、《オテロ》、《ワルキューレ》の新演出を、それぞれ指揮した。
ロンドンの王立音楽院の名誉会員であるティーレマンは、ワイマールのフランツ・リスト音楽院とベルギーのルーヴェン・カトリック大学から名誉博士号を授与されている。